壊したり創ったり考えたりするブログ

タイトル通りです。説明不要。多くは語らず。尻尾は振らず。どうかよろしくお願いします。

解体シリーズ第1弾「いまいち不透明な建物の解体ざっくり紹介します」

はじめまして、管理人のショックマンと申します。

僕は解体業で重機オペレーターをしておりまして今年で13年が経ちました。
解体業と言いましても個人向けの木造住宅の解体ではなく、企業の建物や工場などの解体を主にしています。

まだまだベテランの域には程遠いですが、これまで得た知識や経験を活かして「解体工事」というのを数回に分けてここから発信していきたいと思います。


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さて、みなさん建物の解体ってどんな風に行われているかご存知ですか?

おそらくご存知ない方が1割、興味ない方が8割だと思います。
最近では解体の番組などもテレビで放送されるほど巷では解体ブームが到来しているようですね。
それでも興味ない人8割は妥当かなと。

そんなわけで残りの1割の方のためになることを願って書いていきますのでよろしくお願いします。

それではさっそく参りましょう。


1.仮囲いを組む
これは工事が始まったらだいたい一番最初に行い、工事が終わるまで残せるだけ残しておきます。
解体対象の物件の敷地を囲うように単管という鉄パイプで骨組みをしてそこにパネルやシートを張っていきます。
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何を張っていくかは現場によって違うのですが、共通して言える役割は「目隠し・防塵・第三者災害の防止」です。


2.内装を解体する
家庭でゴミを分別して捨てるのと同じように、解体で出た廃材も種類ごとに分別して処分します。

内装材で出てくるのは壁紙、石膏ボード、断熱材、木、プラスチック類というように一般住宅とそんなに大きな違いはありません。

基本的には人の手で解体していきますが、工期短縮のためできるだけ重機を使いたいので、よほど面積が小さくなければ3t以下の小さい重機を室内に入れて使うことはよくあります。
「重機が室内に入るの?」と思うかもしれませんが意外とすんなり入りますし自由に動けます。

集めた廃材はエレベーターや床に穴を空けて1階まで落として搬出していきます。
窓から投げ落としたり、シュート(滑り台のような物)を簡易的に設置して滑り落とすことも多いです。


4.養生足場を組む
建物に沿って足場を組み、そこへ防音パネルや防音シートを張っていきます。
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壁にアンカーを打って足場を固定してますので、大型の台風が直撃して運が悪くなければよほど倒壊することはありません。

台風の被害がニュースで流れたときに建設現場や解体現場の足場が倒壊しているのを見たことある方は多いと思いますが、あれは運が悪いとしか言いようがありません。

壁との固定をしっかりやらないと足場を組む本人たちが命に関わってくるので、手抜きをしているわけがないからです。
ああいうニュースを見た時に、もし自分がその現場の管理者だったらと思うと少々へこみます。

養生足場の役割としては仮囲いとほぼ同じですが、上屋解体の前に外壁を手で取ったり何かしらの加工が必要な場合は作業足場としても使用されます。

ここではわかりやすくするため足場を4番目としてますが、内装解体する前に足場を組んだり、内装解体しながら足場を組んだり現場の状況によって様々です。


5.上屋を解体する
内装もきれいさっぱりなくなって養生足場もできたらいよいよ建物を壊していきます。

建物の造りは大きく分けて4種類です。
木造、S造(鉄骨造)、RC造(鉄筋コンクリート造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)となります。

ここで使われるアタッチメントは主に圧砕機と呼ばれるもので、建物の造りによって使う種類が変わります。

RC造にはクラッシャー。
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S造にはカッター。
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SRC造にはSRCカッター。
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木造にはフォーク。
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フォークは圧砕機ではなくつかみ機ですが。

現在日本で行われている工法は、ながーい腕がついた大型重機による「地上解体」と、重機を建物の上に乗せて上の階から壊していく「階上解体」の主に2つです。

ちなみに漫画であるようなでっかい鉄球ぶん回してどかーん等は全くと言っていいほど行われていないと思います。
爆破は環境と条件さえ整っていれば行われることもあるようですが、でっかい鉄球での解体がもし行われているとしたら正気の沙汰とは思えません。

あんな重量物を振り回すなんて危なすぎますし、例えばRC造の建物にそれをぶつけたところでびくともしないはずです。
壊すことができたとしても壁だけ、柱や梁なら50センチ角がいいとこじゃないでしょうか。
築年数や建築時のコンクリートの強度にもよるので一概には言えませんが。

参考までに、約6tのアタッチメントを結構な強さで梁や柱にぶつけてもこれまたびくともしません。
それほど鉄筋コンクリートというのは頑丈なのです。

爆破も怖いですけどね。


6.土間・基礎・地中梁を解体する
上屋の解体が終わったら土間をめくって基礎の解体に移っていきます。
土間というのは1階のコンクリート床のことなのですが、この土間をめくった時にかなり厄介な場合がありまして。

建物がある程度新しいと、スタイロフォームという水色の発泡スチロールのような断熱材が土間の下に敷いてあるのですが、
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土間を割る時にこのスタイロが一緒に細かく割れてコンクリートガラと混ざるんです。

そんなゴミが混ざった状態でガラを捨てると受け入れてもらえないことがあったり、運搬中や現場でスタイロのかけらが風で外に飛んで行ってしまう可能性があるのでできるだけ拾い集めます。
そこそこ大きいピット(水槽のようなもの)があればそこに水を貯めてガラもスタイロもぶちこんで、浮いてきたスタイロだけ拾うことができます。

土間がめくれたら地中梁と基礎の周りの土を掘ります。
地中梁と基礎があらわになったらできるだけクラッシャーで壊し、基礎が大きくてクラッシャーで壊せない場合はブレーカーを使って壊していきます。
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細かくなったコンクリートガラを掘り出して取り除いたら、先ほど掘った土や次に撤去する基礎周りの土を使って埋め戻して締め固めます。

コンクリートを取り除くときはスケルトンバケットを使って土をふるい落とします。
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これを繰り返してすべての土間、地中梁、基礎を撤去すれば建物の解体は完了です。

これまでに発生したコンクリートガラは小割機というアタッチメントで細かく砕いて鉄筋を取り除きます。
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ガラは搬出するか、現場内でリサイクルマシンで砕石にしてしまいます。


7.外構、仮囲いを撤去する
敷地内にある舗装、側溝、インフラ設備の配管、敷地境界の縁石や植栽など、撤去対象のものを撤去していきます。

この段階になると邪魔になる仮囲いは撤去していくのですが、道路際だったり隣家のすぐ近くで工事をするので一番気を遣うところでもあります。

外構、仮囲い共に撤去し終わり、敷地内の地盤をある程度きれいにしたら工事完了です。



以上、解体現場の7つの工程をざっくりと説明してみましたがいかがだったでしょうか?
現場によって状況は様々ですので一概にこの通りというわけではありませんが、おおよその流れとしてはこのようになります。

解体工事ってどんなことしてるのかいまいちわからなかったり不透明な部分が多いと思います。
建築と違って情報も少ないです。
なのでこのサイトから少しでも役に立つ情報が見つかればいいなあと思い書いてみました。

わからないことや気になることがあったらお気軽にコメントくださったら嬉しいです。
僕の経験の中から分かる範囲でお答えしたいと思います。

それでは次回もよろしくお願いします。

最後まで読んでいただきありがとうございました。